京都市交響楽団 特別演奏会「第九コンサート」(指揮:沼尻竜典)

まずは今回の演奏会の指揮を務められた沼尻竜典さんが来シーズン(2013年8月1日)からドイツのリューベック歌劇場[http://www.theaterluebeck.de/]のGMD(音楽総監督)に就任されることが決まったそうで、おめでとうございます(ニュースはここをクリック ちなみに歌劇場専属オケのリューベック・ フィルハーモニーのGMDと兼任)。沼尻さんは日本人指揮者の中では、びわ湖ホール芸術監督を務められたりでオペラを振る機会の多い方ですが、ドイツ北部の20万都市のオペラハウスとはいえ、欧州でイタリアと並ぶオペラの本場でGMDのポストを得られるなんて誠に喜ばしいかぎりです。欧州も不況の最中ではありますが、そうした逆境を撥ねのけて今後の益々のご活躍を祈りたいと思います。
さて、生の演奏会では期待を良い意味でも悪い意味でも裏切られることがよくあり、それがまた醍醐味でもあるのですが、今回は良い意味で予想を裏切られて寒い中で出かけた甲斐がありました。年の瀬にベートーヴェンの第九を頻繁に演奏しては餅代を稼ぐ、またクラシックファンも年末=第九を聴く気分になる、そうした日本の風習が私は大嫌いなのですが、それを抜きにして今回は沼尻さんの工夫と良い演奏を聴けた貴重な機会でした。

 

京都市交響楽団 特別演奏会「第九コンサート」
2012年12月27日(木)19時開演@京都コンサートホール
◆ワーグナー 舞台神聖祝典劇『パルジファル』〜第1幕前奏曲
(休憩)
◆L.v.ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調 Op.125
指揮:沼尻竜典
ソプラノ:コ・ヒョナ
メゾソプラノ:澤村翔子
テノール:チャールズ・キム
バリトン:青山貴
合唱:京響コーラス(合唱指揮:小玉晃)
コンサートマスター:泉原隆志

 

1曲めは『パルジファル』の前奏曲。明日の一般向け公演では『マイスタージンガー』の前奏曲とワーグナーの曲をチョイスしたのは年明けのワーグナー・イヤー(生誕200周年)を見越してでしょうか。その『パルジファル』第1幕前奏曲、厳かな雰囲気で集中力の漲った好演でした。
ところで、今日はホールに入ってステージを見ると何かいつもと違うような感じ・・・団員が入場してはっきりわかったのですが、弦セクションの最後列のプルトが2段、その前の列が1段、ひな壇を上げてあったんですね。もともと配置がステージ後方にあたる管楽器やパーカッションがいる位置で段を上げるのは常ですけど、弦でこうしたのは珍しいですね。視覚的には指揮者を中心に全奏者がいわばお椀状に並んでいる形になるのですが、それが音響的にどのような効果をもたらしたのか大いに気になりました。私の席はステージ真横の2階席なのでヴァイオリンの最後列プルトの座ってる位置が私の目線に近い高さという、実を言うと音響的には数少ない逆効果な位置なんですよね(苦笑)。他の場所ではどうだったのか、“わたし、気になります!”(爆)。
そして10分の休憩を挟んでの第九、ここでも配置にちょっとした工夫が。独唱歌手の位置が指揮者のそばでなくステージ最後方に陣取っている合唱団の1列前で木管セクションの後ろ。いわば人間の声という楽器を一纏まりにした形です。ちなみにトランペット、ホルン、パーカッションは左後方に、トロンボーンが右後方。沼尻さんの考えがどうだったのかはわかりませんが、私の印象では利点が2つありました。まずはソリストとコーラスの位置を同じくしたことで視覚的にも聴覚的にも声楽に一体感があったこと。もう1つは視覚的にソリストが目立たなくなったことで終楽章でいかにコーラスが重要な位置付けにあるのかが素人目にも一層明確になったこと(逆にいうならソリストが不必要に目立つことがなくなったこと)、以上でしょうか。あと個人的に好ましく思ったのが、第2楽章と第3楽章の間でチューニングをしている最中にソリストが登場してきたのですが、後ろの扉から出てきたので客席から拍手がまったく起こらず、おかげで無駄に気を削がれることもなく第3楽章からの音楽に集中できたことですね(笑)。
沼尻さんの振る第九は私は初めて聴いたのですが、俯瞰的に流れるような音楽作りと声楽パートの溶けこませ方にはオペラを連想させるものがありましたし、オケともども章を追うごとにエンジンがかかっていくような感じで大変な熱演でした。正直期待値がそれほど高くなかったので、この予想以上の好演に接することができて本当に良かったです(これで座席が悪くなければもっとよかったのですが・苦笑)。沼尻さん、終楽章では一緒に歌ってるかのように歌詞を始終口ずさんでました(さすがに口真似だけで声には出してなかったはずですが)。ソリストは全体的にマァマァといったところでしたけど、コーラスはよく健闘していましたね。8月のプーランクのスターバト・マーテルでも頑張っていましたし、この調子で来年のドヴォルザークのスターバト・マーテルに向けても研鑽を重ねてほしいと思います。オケも連日の第九演奏続きで疲労もピークにあったはずですが、それでも新鮮味を感じさせる弾きっぷりには近年の好調ぶりがよく現れているようで改めて感心させられました。
これで今年の京響の演奏会を聴くのは終わり。来年は私にしては珍しく・・・というか初めてニューイヤーから京響の演奏会に接することになりますが、年々レベルアップしている広上&京響コンビの一層の躍進を祈って、この文章を締めくくりたいと思います。